フリー率は 高いと まずいのか ── 三つの数え方と、下げてはいけない場合
フリー率が高い=指名が取れていない、と読むのは 早すぎます。分母を 受注で取るか 客数で取るか 新規で取るかで 意味が変わり、業種によっては 高いほうが 健全です。数え方・読み方・打ち手を 実務の順で 並べました。
「フリー率が 高いんです」という言い方には、たいてい 良くないことを言っている、という含みが あります。指名が 取れていない、力のあるキャストが 少ない、という意味で 使われます。
ですが フリー率は 単独では 良し悪しを 判じられない数です。分母の取り方で 数字が 大きく動き、しかも 業種によっては 高いほうが 正常な形が あります。下げにいく前に、何を 数えているのかを 一度 見ておく価値が あります。
先に 要点だけ
- フリー率は 分母の取り方で 三通り あり、数字が 10 ポイント 以上 動く
- **高い=悪い、では ない。**新規の入りが 多い店ほど 高く出る
- 見るべきは 率そのものではなく、フリーで来た客が 二度目に どうなったか
一行の定義
まず 言葉を 置きます。フリーとは 来店・予約の時点で 特定の相手を 指定していない状態を 指します。ここは どの店でも だいたい 共通です。
分かれるのは その先、何を 分母に するかです。
受注に対するフリー率
**その期間の受注のうち、フリーだった件数の割合。**いちばん 素直な数え方で、多くの店が これを「フリー率」と 呼んでいます。
客数に対するフリー率
**その期間に来た客のうち、一度でも フリーで来た人の割合。**同じ人が 何度も 来ると、受注に対する数とは ずれます。
新規に対するフリー率
**新規客のうち、フリーで入った人の割合。**新規は そもそも 指名を 持っていないので、この数は たいてい 高く出ます。高く出るのが 正常な数です。
三つの違いを 並べる
| 数え方 | 分母 | 主に 何が 見える |
|---|---|---|
| 受注に対する | 期間内の受注件数 | 現場の配分(誰に 何件 回ったか) |
| 客数に対する | 期間内の実人数 | 常連の厚み(同じ人が 何度も 来ているか) |
| 新規に対する | 新規客の人数 | 入りの経路(どこから 来ているか) |
同じ月で 数えると どうなるか
受注 400 件・実人数 220 名・そのうち新規 90 名、という月を 例に 置きます。フリーの受注が 160 件、フリーで一度でも来た人が 110 名、新規のうちフリー入店が 72 名 だとします。
受注に対する …160 ÷ 400 = 40.0%
客数に対する …110 ÷ 220 = 50.0%
新規に対する … 72 ÷ 90 = 80.0%
同じ月です。それでも 40 / 50 / 80 と 倍の開きが あります。「うちは フリー 4 割です」と言う人と「8 割です」と言う人が、同じ店の 同じ月を 見ていることも 起こります。
なぜ ずれるか
常連は 一人で 何件も 受注を 生みますが、人数としては 一人です。ですから **常連が厚い店ほど、受注に対する率は 下がり、客数に対する率は 相対的に 高く出ます。**新規に対する率は そもそも 別の物を 数えています。
高いと まずい場合と、そうでない場合
ここが この頁の 中心です。同じ「フリー率 50%」でも、意味が 正反対に なります。
新規が 増えている月の 高さ
⭕ これは 良い高さです。募集や 広告が 効いて 新しい人が 入ってきていれば、その人たちは 全員 フリーで 入ります。分子が 増えているのは 入りが 太った結果です。
このとき 率を 下げにいくと、入りを 細くする方向の打ち手になります。順序が 逆です。
常連が 減っている月の 高さ
⚠️ これは 悪い高さです。分子は 変わっていないのに、指名の受注が 減ったために 率だけが 上がっています。
見分け方は 単純で、フリーの件数(実数)が 増えているか、指名の件数が 減っているかを 見ます。率だけを 見ていると この二つが 区別できません。
業種として 高いのが 普通な場合
デリバリー型や、初回の来店が 多い業態では、そもそも フリーの比率が 高いのが 通常の姿です。他店の数字や 業界平均と 比べる前に、自分の業態で どのあたりが 通常かを 押さえておく必要が あります。
予約の入り方で 変わる場合
電話中心の店と、ウェブ予約が 太い店では、指名の入り方が 違います。ウェブでは 相手を 選ぶ画面が 先に出るので 指名が 付きやすく、電話では「空いている人で」に なりやすい ── という差が そのまま 率に 出ます。
画面の作りが 率を 動かしていることは よく あります。現場の力量の話に する前に、そこを 一度 見ます。
数え方を 決める前に 揃える三つ
一 「指名」の 範囲を どこまで 入れるか
本指名だけを 指名と するか、写真指名や ネット指名も 入れるか。ここを 決めないと、フリー率は 指名の定義を 変えた月に 勝手に 動きます。
指名の種類が 複数ある業態では、先に そちらを 整理しておくほうが 早い道です。
二 指名替えを どちらに 数えるか
フリーで入って、その場で 相手が 決まった受注を フリーに 数えるか、指名に 数えるか。店によって 逆の扱いを しています。
実務としては「入りの時点で 数える」ほうが 使えます。フリー率は 入りの経路を 見る数だからです。ただし どちらでも 構いません。決めて 変えないことだけが 効きます。
三 再来を どこから 新規でなくすか
前回の来店から 一年 空いた人は 新規か。半年は。新規に対するフリー率は、この線で 大きく動きます。
多くの店で 90 日 や 180 日 を 使いますが、業態の来店間隔に 合わせて 決めるのが 本筋です。
算定式
受注に対する
フリーの受注件数 ÷ 期間内の受注件数
客数に対する
期間内に 1 回以上 フリーで来た人数 ÷ 期間内の実人数
新規に対する
フリーで入った新規の人数 ÷ 新規の人数
期間の切り方を 固定する
月をまたぐ深夜の受注を どちらの月に 入れるか、キャンセルを 分母から 抜くか ── ここが 揺れると 数ポイント 動きます。一度 決めて、以後 変えないのが 比べられる数の条件です。
率よりも 大事な 一つの数
フリー率そのものは、実は それほど 打ち手に 直結しません。直結するのは その次です。
フリーで来た人の 二度目
⭕ **フリーで入った人のうち、何割が 二度目に 来たか。**これが フリー率より はるかに 効きます。
フリー率が 高くても、二度目が 付いていれば 店は 育っています。フリー率が 低くても、来た人が 一度きりなら 縮んでいます。フリー率は 入りの量、二度目は 定着の質です。
二度目に 指名が 付いたか
⇒ ⭕ さらに 一段 進めて、二度目に 相手を 指定して来たかを 見ます。ここが 付き始めていれば、初回の接客が 効いています。付いていなければ、フリー率を どう動かしても 積み上がりません。
誰に 回したかで 二度目が 変わる
同じ「フリー」でも、誰に 回ったかで 二度目の付き方は 変わります。回した先ごとに 二度目の率を 出すと、配分の判断が 数で できるようになります。
待機の長さも 効く
フリーを 均等に 配ろうとすると、待機が 長くなる人が 出ます。待機が 長い月は 提出が 減り、翌月の人手に 響きます。フリーの配分は 出勤の話でも あります。
数字を見た後、どう動くか
率を 出しただけでは 何も 変わりません。上で 分けた「良い高さ」と「悪い高さ」で、打つ手が 別々に なります。
良い高さ(新規が 増えている)のとき
⭕ **やることは 率を 下げることでは なく、二度目を 取ることです。**入りは 足りているので、初回の 出方に 手を入れます。
具体的には、初回に 誰を 当てるか の決め方、初回の 記録に 何を 残すか、次の 案内を いつ 出すか ── この三つです。率は 結果として 後から 下がります。先に 下げにいくと 入りを 細らせます。
悪い高さ(常連が 減っている)のとき
⚠️ こちらは 率ではなく 指名の実数が 主役です。誰の指名が 落ちたのか、いつから 落ちたのかを 人ごとに 並べます。
多くの場合、落ちているのは 全体ではなく 数名です。そして その数名の 客が 一斉に 来なくなっているのではなく、間隔が 少しずつ 伸びているという形を しています。伸び始めた時点で 気づけるかが 分かれ目です。
配分を 変えるとき
フリーを 誰に 回すかは、二度目の率が 高い人に 寄せるのが 素直な形です。ただし 寄せすぎると 他の人の 待機が 伸び、出勤が 落ちます。
実務では「二度目の率が 高い人に 少し 厚く、ただし 全員に 一定数は 回す」という置き方に 落ち着きます。厚みの度合いは 店の人数で 変わるので、一度 決めて 一か月 回してから 見直すのが 早い道です。
何も しないほうが 良いとき
⭕ 新規が 増えていて、二度目も 付いていて、待機も 伸びていない ── このとき フリー率が 高くても 触る要は ありません。
指標を 出すと 動かしたくなりますが、動かす必要が ない事を 確かめるのも 指標の役目です。
月ごとに 並べたとき 何を 読むか
一度 数えて 終わりでは、率は ほとんど 役に立ちません。並べたときに 初めて 意味が 出ます。
率と 三つの実数を 同じ図に 置く
フリー率・フリーの件数・指名の件数・新規の人数。**この四つを 同じ図に 置くと、率が 動いた理由が その場で 分かります。**率だけの図は、毎月「上がった」「下がった」を 言うだけで 終わります。
率が 動かない月にも 中身が 動いている
フリーと 指名が 同じだけ 減れば、率は 動きません。**率が 平らな月ほど 実数を 見ます。**平らさは 安定の印では ありません。
変えた月を 図に 書き込む
媒体を 止めた、料金を 変えた、予約の画面を 直した、担当が 替わった ── その月を 図の上に 印として 残します。後から「なぜ この月から 動いたか」を 探す時間が、これだけで ほとんど 消えます。
前年同月と 並べる
季節の影響が 大きい業態では、前月比よりも 前年同月比のほうが 読みやすくなります。ただし 一年前と 定義が 同じかを 先に 確かめます。定義が 変わっていれば、比べているのは 別の数です。
よくある 読み違い
率が 下がったので 良くなったと 読む
⚠️ **新規が 減っても 率は 下がります。**指名の件数が 同じで フリーが 減れば、分子だけが 落ちて 率は 改善したように 見えます。実際に 起きているのは 入りが 細ったことです。
率と 実数(フリーの件数・指名の件数・新規の人数)を 必ず 並べます。
業界平均と 比べて 判じる
⚠️ 業態・立地・予約経路が 違えば、通常の水準が 違います。外の数と 比べて 意味が あるのは、条件が 揃っているときだけです。
自店の 前月・前年同月と 比べるほうが、たいていは 早く 正確です。
平均だけを 見て 人ごとの分布を 見ていない
同じフリー率でも、「全員に 均等に 回っている」と「数名に 集中している」では 打ち手が 違います。人ごとに 並べると、たいてい 一目で 分かります。
一日の中の 偏りを 見ていない
⚠️ 同じ月でも、平日の早い時間は フリーが 多く、週末の遅い時間は 指名が 多い ── という形が よく あります。月でまとめた 一つの率は、この二つを 平らに 潰した数です。
打ち手は 時間帯ごとに 変わりますので、動かしたい時間帯が はっきりしているなら、その時間帯だけで 数え直すほうが 早く 効きます。
引き継ぎで 定義が 変わっている
担当者が 替わった月に 数字が 動いたら、まず 疑うのは 現場ではなく 定義です。数え方は 引き継がれにくく、声で 渡すと 消えます。
何を 記録しておけば 後から 数えられるか
入りの時点の 状態を 残す
フリーで入って 途中で 相手が 決まった受注は、入りの時点の状態を 上書きしないこと。上書きすると、フリー率は 二度と 正しく 数えられません。
指名の種類を 分けて 残す
本指名・写真指名・ネット指名 ── 一語で 足ります。後から 定義を 変えたくなったときに、**分けて残してあれば 数え直せます。**まとめて「指名」で 潰していると 戻せません。
新規か 再来かを 判定した日を 残す
判定そのものではなく、判定に使った前回来店日を 残します。90 日を 180 日に 変えたくなったとき、前回来店日が あれば 過去まで 数え直せます。
誰に 回したかを 残す
フリーの配分は、後から 効きを 見たくなる代表格です。受注ごとに 相手が 残っていれば、回した先ごとの 二度目の率が 出せます。
三つだけ 持ち帰るなら
1 フリー率は 分母で 三通り。同じ月で 40 / 50 / 80 まで 開く
2 高い=悪い ではない。新規が 増えた月は 高くなるのが 正常
3 見るべきは 率ではなく、フリーで来た人の 二度目
記録が どこに あるべきか
入りの時点の状態・指名の種類・前回来店日・回した先 ── この四つが 同じ場所に 並んでいれば、フリー率は 三通りとも 後から 数え直せますし、二度目の率も 出せます。
別々の場所に あると、定義を 変えたい月に 過去が 追えず、比べられない数だけが 積み上がります。フリー率を 下げにいく前に、この四つが 一箇所に 残っているかを 確かめるほうが、結局は 早い道です。