担当が辞めた時、その指名は誰のものか ── 引き継ぎで客が消える
キャストやスタッフが辞めると、その人に付いていた客も一緒に消える。消える分をどこまで減らせるか、そして引き継ぎが失敗する共通の理由は「引き継ぐ相手」ではなく「引き継ぐ中身が無い」ことにある。
キャストが 1 人辞めると、その人の指名客が何人か一緒に消えます。
これは避けられない部分があります。客はその人に会いに来ていたのであって、店に来ていたわけではない場合が多いからです。
**ですが「何人消えたか」を数えている店は、ほとんどありません。**数えていないので、減らせる分がどれだけあったのかも分かりません。
まず数える
辞めた日を境に、その人の指名客が 3 か月でどうなったか。
一 別の担当に付いた …店には残った
二 フリーで来ている …店には残ったが 指名は無い
三 来ていない …消えた
この 3 つに分けるだけです。1 人ぶん数えるのに 10 分もかかりません。
多くの店で、三が想像より多いという結果になります。そして三の中に、引き継ぎさえしていれば残ったはずの人が混ざっています。
引き継ぎが失敗する本当の理由
「引き継ぎをした」と言う店に、何を引き継いだのか聞くと、たいてい名前と連絡先です。
名前と連絡先は、引き継ぎではありません。それは名簿です。
新しい担当が知る必要があるのは、その客が何を目当てに来ていたかです。
どの曜日・どの時間に来るか
何を頼むか(飲み物・コース・席)
話していい話題・避ける話題
前の担当と どういう関係だったか(長さ・頻度)
最後に来たのはいつか
これが無い状態で新しい担当が付くと、客から見れば「初めて会う人が、自分のことを何も知らないまま担当になった」となります。それは引き継ぎではなく、リセットです。
書き残す場所が無いと、引き継げません
ここが本題です。
上に挙げた 5 つは、多くの店で担当者の頭の中にしかありません。頭の中にあるものは、辞める時に一緒に出ていきます。
辞める 2 週間前に「引き継ぎ資料を作って」と言っても、遅い。辞めると決めた人が、丁寧に書くとは限りません。
⇒ 引き継ぎは、辞める時にやる作業ではありません。普段から残っている状態を作っておくことが引き継ぎです。
現実的な形
毎回の来店で 1 行。長い文章は要りません。
2026-08-20 ボトル入れた。9 月に友人 2 名連れてくると言っていた
2026-08-06 仕事が忙しいとのこと。次は月末あたり
これが 10 行たまっていれば、新しい担当が読んで、次に会った時に話せます。客から見て「引き継がれている」と分かるのは、この 1 行があるかどうかです。
⚠️ ゲストノートの類を入れている店でも、書く人と書かない人に分かれるのが普通です。書かせる仕組みではなく、書く場所が近いかどうかで決まります。会計の画面から 2 タップで書けるなら書かれます。別のアプリを開く必要があるなら書かれません。
誰に引き継ぐか
これは中身より後の話ですが、共通する失敗があります。
いちばん指名の多い人に渡す、という判断です。理屈は分かりますが、その人はすでに手一杯です。引き継いだ客に手が回らず、結局フリー扱いになります。
見るべきは指名数ではなく、その担当が受けられる余裕があるかです。空きの多い曜日が合っているか、いま何人抱えているか。
もう 1 つ。客の側に選ばせる方が定着する場合があります。「次はこの人が担当になります」ではなく、選択肢を 2 人出す。押し付けられた感じが減ります。
辞める前の 2 週間にできること
辞めることが分かってから、まだ手はあります。
一 最後の出勤日を、指名客に伝えられる形にする。 本人から伝えてもらうのがいちばん効きますが、これは本人の意思次第です。無理には頼めません。
二 その期間に来た指名客には、次の担当を紹介しておく。 辞めた後に初めて別の人が出てくるより、在職中に 1 度会っている方が残ります。
三 来ていない指名客を洗い出す。 辞める時点で「最近来ていない人」は、そのまま消えます。ここは引き継ぎ以前に、来店の記録が無いと洗い出せません。
数字で見ておくと防げること
引き継ぎの話は感情が絡むので、数字を持っておくと判断が楽になります。
**1 人辞めた時に平均で何人消えるか。**これが分かっていると、採用や定着にいくらまで使ってよいかの目安になります。辞めることのコストが、給与や採用費だけではないと分かります。
**担当ごとの指名客の集中度。**1 人に 30 人付いている状態は、売上としては良いのですが、辞めた時の損失も大きい。集中しすぎているのが見えていれば、事前に手を打てます。
⚠️ これは「その人を減らす」という話ではありません。同じ客が別の担当とも接点を持つ機会を作っておく、という話です。
隣の頁との 分担
| 何の話か | どちらの頁か |
|---|---|
| 担当が 辞めた時の 引き継ぎ | この頁 |
| 記録の 1 行に 何を 書くか | ゲストノートは 何を書けば 効くのか |
| 何の項目を 持つか(器の形) | 顧客台帳に 何を残すか |
| 指名の 種類と 数え方 | 指名の数え方が 揃っていない |
| 来なくなる 前に 出る兆し | 客が来なくなる前に 出ている 3 つの兆し |
⚠️ 辞めると決まってから 書かせるのは 遅うございます。 ⇒ 日頃の 1 行が、その時に 効きます。
引き継げない 本当の理由
一 記録が 個人の側に 在る(端末・記憶)
二 記録は 在るが 中身が 評価(次の人が 使えない)
三 引き継ぐ相手が 決まっていない
四 お客様に 何も 伝えていない
⚠️ 四 が いちばん 落ちます。 ⇒ ⇒ 店の中だけで 引き継いでも、お客様の側は 何も ご存じありません。
四 が 落ちると どうなるか
次にお越しになる ⇒ 前の方が 居ない ⇒ 何も 聞いていない
⇒ その場で 決められる(別の店へ)
⇒ ⚠️ **その場で 失います。**引き継ぎの 中身以前でございます。
お客様へ どう お伝えするか
辞められる前に …本人から 一言
辞められた後に …店から
⚠️ 前者が 効きます。 ⇒ ⇒ ただし 本人が 承知の上で なければ できません。
伝える中身
「◯◯は ◯月で 退きますが、△△が 引き続き お世話になります」
⇒ ⚠️ 次の方の名を 添えるのが 肝でございます。 ⇒ ⇒ 名が 無いと「担当が 居なくなる」だけが 残ります。
言えない時
円満でない / 急に 辞められた
⇒ 店から 出してください。⚠️ 何も 言わないのが いちばん 悪うございます。
辞める前の 2 週間に できる事
一 記録の 抜けを 埋めていただく(好み・約束・次回の話)
二 引き継ぐ方と 一度 同席していただく
三 お客様へ 一言 出していただく
⚠️ 二 が いちばん 効きます。 ⇒ ⇒ 一度 顔を 合わせておられれば、次が 続きます。
頼み方
「引き継ぎの分だけ、記録を 足していただけますか」
⇒ ⚠️ 辞める理由には 触れないでください。 ⇒ ⇒ 触れると、書いていただけなくなります。
書いていただく物を 絞る
好み / 約束した事 / 次回の話
⇒ ⚠️ 3 つだけでございます。多いと 書かれません。
引き継いだ後に 見る
一 その方が 次に お越しになったか
二 間隔が 伸びていないか
三 使う額が 下がっていないか
⚠️ 二 が いちばん 早く 出ます。 ⇒ ⇒ 来られてはいるが 間隔が 伸びている場合、引き継ぎが 効いておりません ⇒ 客が来なくなる前に 出ている 3 つの兆し
見る刻
引き継いでから 3 か月
⇒ ⚠️ 1 か月では 出ません。⇒ ⇒ 3 か月 見て 初めて 分かります。
個人の連絡先に 溜まっている分
いちばん 引き継げないのが、個人の側に 在る やり取りでございます。
その方の 端末に 在る ⇒ 辞められると 一緒に 消えます
⚠️ 消えた事に こちらは 気づけません。 ⇒ ⇒ お客様の側から 見ると、急に 連絡が 途絶えた形になります。
日頃から 移しておく
決まった事だけ(いつ・何人・誰の指名・約束した事)
⇒ LINE で来た予約が 記録に残らない ⚠️ 辞める時に まとめて 移すのは できません。
辞められる時に お願いできる事
お客様へ 一言 出していただく(次の方の名を 添えて)
⇒ ⚠️ やり取りそのものを 求めないでください。 ⇒ ⇒ 個人の物でございます。求めると 揉めます。
揃える 順(1 か月)
第一週 …誰に 何人 付いているかを 数える
第二週 …前回 誰が 付いたかが 記録に 残る形にする
第三週 …引き継ぐ順(同じ刻・一度でも付いた・分けて渡す)を 決める
第四週 …辞める前の 2 週間に やる 3 つを 書き出す
⚠️ 第二週が 要でございます。 ⇒ 記録が 無いと、第三週の 二(一度でも付いた方)が 選べません。
よくある問い
Q. 辞めると 分かってから で 間に合いますか。 ⇒ 2 週間 在れば 間に合います。⚠️ ただし 日頃の 1 行が 在る事が 前提でございます。
Q. お客様に お伝えすべきでしょうか。 ⇒ お伝えください。⚠️ 何も言わないのが いちばん 悪うございます。
Q. 誰に 引き継げば よろしいでしょうか。 ⇒ 一度でも お付きした方が いちばん 強うございます。⚠️ 空いている方で 決めない。
Q. 引き継いだ後 どう 見れば。 ⇒ 間隔でございます。⚠️ 来られていても 伸びていれば 効いておりません。
Q. どこから 手を付ければ よろしいでしょうか。 ⇒ 誰に 何人 付いているかを 数える事でございます。辞められる前に。
記録が残る所に置く
上のどれも、来店の履歴が客ごとに残っていないと始まりません。
伝票が席に付いていて客に付いていない店では、「この客は誰の指名で、何回来て、最後はいつか」が出てきません。出てこないので、辞める時に引き継ぐ中身が作れません。
tasteck では、来店の記録が客ごとに残り、担当が付きます。辞める人の指名客一覧・最終来店日・1 行メモが、その場で 1 つの一覧になります。
⚠️ ただしツールは最後です。**先に「毎回 1 行」から始めてください。**それが 10 行たまっていることが、引き継ぎが成立する条件そのものです。