稼働率の見方 ── 分母を「出勤」にするか「枠」にするかで 別の数字になる
キャストの稼働率は 分母の取り方で 6割にも 4割にもなります。3つの数え方、上げる筋と上げてはいけない場面、シフトの入り方との関係、そして毎月どこから取るか。算定式つき。
「今月の稼働率は 6 割でした」
その 6 割の 分母は、出勤した時間でしょうか。それとも 出せる枠でしょうか。
稼働率は 客単価と並んで、定義が 揃っていないまま 会議に出てくる数字です。 分母を 変えるだけで 6 割が 4 割になり、施策の向きが 逆になります。
この頁では 一 分母を 3 つに分ける/二 上げる筋と 上げてはいけない場面/三 毎月どこから取るか の順で、そのまま使える形に します。
まず結論(急ぎの方へ)
一 分母は 3 通り …出勤時間 / 提出枠 / 営業時間。混ぜない
二 現場の改善に 使うのは【出勤時間ベース】
三 採用と シフトの判断に 使うのは【提出枠ベース】
四 稼働率は 高ければ 良い数字では ない。90% 超は 断りが 出ている印
五 率と 実数(本数・時間)を 必ず 並べる
⚠️ **四 が 見落とされます。**稼働率が 高すぎる時、 受けられなかったお客様が 見えない所で 出ています。
一 分母を 3 つに 分ける
1-1 三つの 数え方
| 分母 | 何が分かるか | 使う場面 |
|---|---|---|
| 甲 出勤した時間 | 出た人が どれだけ 動けたか | 現場の改善・本人への説明 |
| 乙 提出された枠 | シフトの 埋まり方 | 採用・募集の判断 |
| 丙 営業時間 × 人数 | 店として どれだけ 回せたか | 全体の 能力の把握 |
甲 稼働率 = 接客した時間 ÷ 出勤した時間
乙 稼働率 = 接客した時間 ÷ 提出された枠の時間
丙 稼働率 = 接客した時間 ÷(営業時間 × 出勤人数)
⚠️ 甲と乙は よく混ざります。 提出したのに 入れなかった枠が 分母に 入るかどうかで 別の数字になります。
1-2 同じ月で 比べると
(丸めた例です)
| 分母 | 出る稼働率 | 読み方 |
|---|---|---|
| 甲 出勤時間 | 62% | 出た人は そこそこ 動けている |
| 乙 提出枠 | 41% | 提出の 6 割しか 入れていない |
| 丙 営業時間 × 人数 | 34% | 店としては 余力が 大きい |
⇒ 同じ月・同じ台帳で 3 つとも 正しい数字です。 ⚠️ どれを 見ているか 言わずに 話すと、会議が 噛み合いません。
1-3 どれを 主に 使うか
毎月の 定点 …甲(出勤時間ベース)
⇒ 現場が いちばん 動かせる数字
四半期の 判断 …乙(提出枠ベース)
⇒ 提出が 余っているなら 募集より 先に 集客
⇒ 提出が 足りないなら 集客より 先に 募集
⚠️ 乙 を 見ずに 募集をかける店が 多いのですが、 提出枠が 埋まっていない状態で 人を増やしても、埋まらない枠が 増えるだけです。
二 稼働率が 高すぎる時
2-1 90% を 超えたら 疑う
稼働率 90% 超 = ほぼ 隙間なく 埋まっている
⇒ 予約の 断りが 出ている見込みが 高い
⚠️ 断った件数は どこにも 残りません。 電話で 断り、記録に 残さなければ 売上の機会が 消えたことすら 分かりません。
断った件数を 1 行 残す(日付・刻・断った理由)
⇒ これだけで、募集をかける根拠が 数字で 出ます。
2-2 高い稼働率の 副作用
一 延長が 取れない(次が 詰まっている)⇒ 客単価が 下がる
二 送迎が 回らない(車が 空かない)⇒ 遅れが 出る
三 本人が 疲れる ⇒ 翌週の 提出が 減る
⇒ **三 が いちばん 高くつきます。**その週の売上のために 翌週を 削る形です。
2-3 目安
⚠️ 業態と 立地で 大きく変わります。他店と 比べず 自店の 前年同月と 比べてください。
70〜85%(出勤時間ベース)…余裕が在り 延長も 取れる帯
85% 超 …断りと 疲れが 出ます。募集か 枠の広げ方を 見る
60% 未満 …集客の側の 話。人を増やしても 埋まりません
三 上げる筋
3-1 筋その一 …待機の 偏りを 直す
1 人あたりの 待機時間を 出す
⇒ 同じ日に 待機 4 時間の人と 30 分の人が 居ないか
⚠️ **偏りは 本人が いちばん先に 気づきます。**そして 提出が 減ります。 ⇒ 稼働率の話は、定着の話と 同じ所に 出ます。
3-2 筋その二 …枠の 刻み方
60 分だけ ⇒ 90 分のお客様を 受けられない
細かすぎる ⇒ 間の移動で 実際には 埋まらない
⇒ 実際に 出た予約の 長さの分布を 見て、枠を 合わせてください。 ⚠️ 希望ではなく 実測で。
3-3 筋その三 …移動の時間を 数える
送迎の在る業態では、移動が 稼働に 入るか 入らないかで 率が 変わります。
入れる …本人の 拘束時間に 近い(本人への説明に 向く)
入れない …売上を生む時間だけ(店の効率を 見るのに 向く)
⇒ どちらでも よいのですが、決めて 書いてください。 混ざると 月ごとの 比べが 壊れます。
3-4 筋その四 …出勤の 刻を 需要に 合わせる
需要の山が 21 時〜24 時なのに 出勤が 19 時から
⇒ 19〜21 時が 待機になり、稼働率が 下がる
⚠️ **稼働率が 低い原因の 半分は【刻のずれ】**です。 人を増やす前に、時間帯ごとの 受注の分布を 見てください。
四 上げてはいけない場面
4-1 定着が 揺れている時
稼働率を 上げる = 1 人あたりの 接客を 増やす
⇒ 疲れが 出る ⇒ 提出が 減る ⇒ 分母が 減って 率だけ 上がる
⚠️ **率は 上がり、実数は 減ります。**いちばん 危うい形です。
4-2 新しい方が 多い時
新しい方の 稼働率は 低く出ます(当然です)。 ⇒ 全体の率で 見ると 悪化して見え、間違った手を 打ちます。
在籍 3 か月未満を 分けて 出す
4-3 断りを 数えていない時
断りが 見えないまま 稼働率だけを 上げると、 どこまで 上げてよいか 分かりません。 ⇒ 先に 4-3 の記録から 始めてください。
五 算定式(そのまま 使えます)
甲 出勤時間ベース = 接客した時間 ÷ 出勤した時間
乙 提出枠ベース = 接客した時間 ÷ 提出された枠の時間
丙 営業ベース = 接客した時間 ÷(営業時間 × 出勤人数)
提出の 埋まり率 = 実際に 入った枠 ÷ 提出された枠
⇒ 乙 が 低い時、原因が 集客か 割り当てかを 分けます
1 人あたりの 待機時間 = 出勤した時間 − 接客した時間(移動を 含むか 決めて)
断り率 = 断った件数 ÷(受けた件数 + 断った件数)
⚠️ 断りを 記録していないと 出せません。ここが 抜けている店が いちばん 多い
前月比を 見る時
⚠️ 出勤人数と 営業日数が 違う月は そのまま 比べない
⇒ 1 人 1 日あたりに 直すか、前年同月と 比べる
六 毎月 どこから 取るか
6-1 要る 5 つ
一 出勤の 記録(誰が いつからいつまで)
二 提出された 枠(実際の出勤と 分けて)
三 接客した 時間(受注に 紐づいた形で)
四 移動の 時間(送迎が 在る業態)
五 断った 件数
6-2 いちばん 抜けやすいのは 二 と 五
二 提出枠 …提出を 個人の連絡先で 受けていると 残りません
五 断り …そもそも 記録する所が 無い店が 多い
⇒ この二つが 無いと、上の 算定式の 半分が 出せません。
6-3 5 分で 出る形に
⚠️ 30 分かかる形は 忙しい月に 落ちます。落ちた月から 比べられなくなります。
甲(出勤時間ベース)と 実数(接客の 総時間)だけは 毎月
乙・丙・断り率は 四半期に 1 回
七 見ておく 5 つ
一 稼働率(分母を 明記して) 二 接客した時間の 実数 …率だけだと 分母が 減ったのか 分かりません 三 1 人あたりの 待機時間の ばらつき …偏りは 定着に 効きます 四 提出の 埋まり率 …募集か 集客かを 分けます 五 断り率 …上げてよい 上限が 分かります
⇒ 五 が 無いと、稼働率を どこまで 上げてよいか 誰も 判じられません。
記録が残る所に置く
上の 5 つは、出勤・提出・受注・送迎が 同じ所に 並んでいないと 出せません。
提出が 個人の連絡先、出勤が 手書き、受注が 別、送迎が また別だと、 月末に 集めるところで 2 週間かかり、出た頃には 手を打てる刻を 過ぎています。
tasteck では 提出・出勤・受注・送迎が 同じ記録に 紐づくため、 稼働率も 待機の偏りも、集めずに 出せます。
⚠️ ただし ツールは 最後です。まず 断った件数を 1 行 残すところから 始めてください。 いちばん 抜けていて、いちばん 判断を 変えます。
稼働率は 高ければ良い数字ではありません。断りを数えていない店には、上限が見えていません。