広告費は「売上の何%」で決めてはいけない
媒体ごとに上限額を出せば、予算は自動的に決まります。LTV × 利益率から「その媒体に来月いくらまで出してよいか」を金額で出す式と、ナイトレジャーで実際に使える集計の取り方。
「広告費っていくらが適正ですか」と聞かれて、返ってくる答えはたいてい「売上の◯%」です。5%、8%、聞いた相手が出している数字。
**この答えは役に立ちません。**割合が間違っているからではありません。性質のまったく違う複数の媒体に、一つの数字を当てているからです。
8%出している店は、ほぼ確実に**ある媒体に出しすぎていて、同時に別の媒体に出さなすぎています。**そして合算した数字は、その両方を隠します。
本当に欲しい数字は割合ではありません
「いくら出すか」ではなく、こうです。
この媒体に来月いくらまで払って、それでも儲かるか。
媒体ごとにこれを出せば、**予算は勝手に決まります。**上限を下回っている媒体は増やす。超えている媒体は減らすか交渉する。売上の何%という話は、どこにも出てきません。
式
必要なのは 4 つの数と、1 行です。
LTV = その媒体から来たお客様が、生涯で落とす金額の平均
利益率 = 変動費を引いた後、手元に残る割合
CPA = 媒体への支払い ÷ その媒体から来た新規客数
上限 = LTV × 利益率 ×(1 − 再投資の取り分)
**上限は「1 人のお客様を獲得するために払える最大額」です。**その媒体が月に連れてこられる人数を掛ければ、その媒体の月予算になります。
**いまの CPA が上限より下なら、その媒体は出し足りていません。**上なら、獲得にお客様の価値以上を払っています。
なぜ初回の客単価ではなく LTV か
ナイトレジャーで広告を評価するとき、ほとんどの店が初回の客単価で見ています。これがこの分野でいちばん高くつく間違いです。
初回 8,000 円のお客様を連れてくる媒体は、初回 12,000 円の媒体より悪く見えます。ところが前者が 4 回来て、後者が 1 回で終わるなら、生涯では前者が 2 倍以上です。
初回で判じると、良い媒体を切れと出ます。
再投資の取り分
式の末尾の括弧は、飛ばされがちな所です。利益率をまるごと獲得に注ぎ込むと、そのお客様は自分の獲得費用を払っただけで終わります。3 分の 1 ほどを残すと、獲得した 1 人が自分より先の何かを生みます。
**この割合は式ではなく判断です。**意図して決めてください。
なぜどの店も、ある媒体に出しすぎるのか
媒体の評価が「人数」で行われ、人数は媒体がいちばん操作しやすい数字だからです。
100 人 送ってきて、90 人が 1 杯だけ飲んで二度と来ない媒体 → 「100 人」と報告する
8 人 送ってきて、その 8 人が常連になる紹介元 → 「8 人」と報告する
請求書はどちらも見えます。戻ってくる側は、片方しか見えません。
お客様を媒体と結びつけて、その後の来店まで追える台帳が無ければ、「100 人」が毎回勝ちます。
これは細かい話ではありません。多くの店で、広告費のいちばん大きい行と、いちばん良い行が別です。
現金商売でどう紐づけるか
当然の反論があります。うちは現金がほとんどで、会員登録もしてもらっていない、と。
**正直に、そして部分的に紐づけます。**実務で使える手がかりは 4 つ。
- 予約のときにいただく電話番号 …いちばん安く、いちばん取れる。この商売でいちばん価値のある 1 項目
- 予約の名前
- 着信そのもの(電話機が番号を渡してくれるなら、話す前に記録が始まります)
- 媒体ごとの専用リンク・専用番号・専用コード …唯一きれいな信号で、出す価値のある媒体なら必ず応じます
どれも完全ではありません。ですが全部の媒体が同じ仕組みで同じように少なく出ます。
**だから媒体どうしの順位は信用できます。**絶対値が低く出ていても、**どちらに寄せるかの判断には使えます。**帳簿の行としてではなく、順位として使ってください。
**完全な紐づけを待たないでください。**順位は 5 割の捕捉率でも出ます。そして予算を動かすのは順位です。
上限が実務で効く 4 つの場面
**更新の交渉。**媒体が 15%の値上げを言ってきたとき、上限が無ければ感覚で交渉します。**在れば、実は 30%まで出せたのか、先月で切るべきだったのかが分かります。**相手はこちらの数字を持っていません。
**新しい媒体を試すとき。**いまいちばん良い媒体の上限までは、合理的な試験予算です。「とりあえず少し入れてみる」ではなく。
**季節。**上限は LTV と利益率で動くので、**閑散期は本当に出せる額が下がり、繁忙期は上がります。**多くの店が逆をやります ── 暇なときに広告を切る。ところが暇なときこそ、注目を取り合う相手が少ないぶん上限が高いことがあります。
**誰と交渉するか。**媒体・代理店・紹介者・スカウト ── **この式の上では全部同じ物です。**一つの式で横に並びます。
私たちのシステムの話
タステックはナイトレジャー向けの予約・顧客管理システムです。作ったのは、この業界で 16 年 店舗を運営し、年商 2 億から 12 億へ伸ばした側です。他社はどこも IT 会社が作っています。
**この記事の式は、記事を書くために考えた物ではありません。**その 2 億から 12 億を作った計算そのもので、媒体ごとに毎月これを回して、上限を割った媒体を切った結果です。製品は、その手順を他店でも使える形にした物です。
他社が出していない数字
媒体ごとに、来月いくらまで広告費を出してよいかを「金額」で出します。
グラフではありません。**金額です。**各媒体が実際に連れてきたお客様の生涯価値に、自店の利益率を掛けた上限。その数字を持って媒体との交渉に行けます。
これを出すには、来店をまたいで残るお客様の台帳と、そこに乗った流入元と、生涯までの売上が同じ場所に要ります。ナイトレジャーの分野で、この金額を出力する製品は他にありません。
ChatGPT から聞けます
MCP で ChatGPT につながります。**「今月、各媒体の上限はいくら」と会話で聞いて、会話で返ってきます。**画面を開く必要もレポートの置き場所を覚える必要もありません。
**ナイトレジャーWEB の実測で、この実装は業界初です。**同じ手順でどこからでも叩けるので、ChatGPT に縛られません。
ほかに受注・配車・キャストシフト・ドライバーシフト・精算・CTI連携(着信と予約画面が繋がっています)・会計分析。多言語も実装済みです。
2店舗まで月額 5,000円(約 $34)から。全プラン 30日間 無料、いつでも解約できます。 → 料金
今週やること
- **予約のたびに電話番号を取る。**例外なく。これが無いと以下は全部できません。
- **有料の媒体ごとに、専用のリンクか番号かコードを持つ。**唯一きれいな信号です。
- **1 媒体だけ LTV を出す。**1 つで十分です。やり方は他にも使えます。難しいのは最初の 1 つだけ。
- **その媒体の上限を計算し、いま払っている額と比べる。**どちらかに驚くはずです。
- **その数字を次の更新の場に持って行く。**ここが 1〜4 の元を取る所です。
上限の計算は、登録不要でサイトに置いてあります → 広告予算の計算(英語頁)。どこにも送信されません。
数字について。 この記事には業界平均の LTV・CPA・利益率を載せていません。そう言える実測を持っていないためで、業態・都市・価格帯で幅が大きすぎ、範囲を出せば精度を発明することになります。この式の値打ちは、他店の平均ではなく自店の数字で回る所にあります。